平安の三色紙(色紙型をした断簡の古筆切)      戻る 寸松庵色紙 一覧へ
 升色紙 春 『山桜見て』 (素色) 拡大へ寸松庵色紙(古今和歌集抄本、伝紀貫之筆)元は粘葉装
 升色紙 春 『山桜見て』 (素色) 拡大へ継色紙(続萬葉集、伝小野道風筆)元は粘葉装
 升色紙 春 『山桜見て』 (素色) 拡大へ升色紙(深養父集、伝藤原行成筆)
元は大和綴

寸松庵色紙は古今和歌集の四季の歌を精撰して書写したもので、元は粘葉本と思われる冊子に書写されたものが分割され、色紙の形に残ったもの。佐久間将監が京都大徳寺の離れ寸松庵で愛玩していた事により、江戸の初めに寸松庵色紙と名付けられたもの。茶掛けとして古筆が持て囃されてくると、この小さな色紙もその散らし書きの美しさからやがて陽の目を見ることとなり、後の世に高値で取引されるに至った。
料紙は縦四寸四分二厘×横八寸四分、色紙としては四寸四分二厘×四寸二分(13.4cm×12.7cm;但し現存する物の寸法はまちまち)。

継色紙は萬葉集・古今和歌集などの歌を書写したもので、続萬葉集では?との声もある。家集名が無く詞書も作者も記していない。又色紙二枚に渡って書写されている様に見えるその形態から、半首切とか半紙切と呼ばれていたこともある。料紙は大まかに5系色の染紙料紙が在り、其の濃淡が使用され空間を大きく使った散し書きで贅沢に然もある種侘びを内在させて幽雅に書かれている。歌は料紙の表面のみに書かれており、裏面には墨入れが無い(内面書写)。
料紙は縦四寸四分二厘×横八寸八分四厘、色紙としては四寸四分二厘角(13.4cm×13.4cm)

升色紙は清原深養父の家集を書写したもので、高野切同様に雲母を撒かれた鳥の子料紙に書写されたもの。元は糸綴じにした大和綴の冊子本と思われるが、現在はすべて枡形の断簡となっている。薄茶の物と薄藍の物とが知られており、雲母の振ってないものが散見されるのは料紙の表裏に書写されていた為で、雲母のある表面と振られていない裏面とが在るから。現存の多くに見られるのは手鏡にする際に、美しい表面が使用されたためと思われる。
料紙は縦約四寸六分×横八寸某程度、色紙としては約四寸六分×四寸某(13.9cm×12.2cm;但し現存する物の寸法はまちまちで最大の物を基準としたもの)



寸松庵色紙
当初の粘葉本として書かれていた状態(A)作者と共に五行書き 「ちはやぶるかみの」 「あめふれば」


寸松庵色紙 秋下 『あめふれば』 (薄渋黄土色) 拡大へ寸松庵色紙 秋下 『ちはやぶる かみの』 (薄藍色) 拡大へ
 其々の項に互いの文字が反転して映っており長い間閉じられた状態にあったと見える。(文字が崩れない程度の高い湿気の中に晒されて墨が移ったもの)

しかも閉じて同じ位置に具剥奪の箇所が直線状に在ることから、閉じた状態で折れ曲がってしまったことも窺える。
       歌263                 歌262
   
                        (藤田美術館蔵)
  唐紙は共に元薄藍色で「柄不明」
多少の色の違いは保存状態による経年変化の差と思われる。

当初の粘葉本として書かれていた状態。作者を入れず色紙型に散しの重点を置いたもの 「ふみわけて」 「秋のつき」


寸松庵色紙 春上 『秋のつき』 (薄渋黄土色) 拡大寸松庵色紙 秋下 『ふみわけて』 (薄渋黄土色) 拡大
 ところが此方には上記写真と同じ様な横の具剥奪はない。その代わり縦に若干斜めに直線状の具剥奪が在る。この縦の具剥奪も閉じれば丁度同じ位置に来る。

即ち閉じた状態で縦向きに折れ曲って終ったのが窺える。
このことから、かなり古い段階で一紙ごとに分散されていたか、少なくともBの物とは別々の断簡になっていたものである。

       歌289                 歌288
   
(東京国立博物館蔵)           (田中親美氏模本)
    唐紙は共に「花襷紋」
色の違いは保存状態による経年変化の差
と思われる。


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当初の粘葉本として書かれていた状態(B)色紙型としては勿論料紙でも鑑賞できる散し
 「ちはやぶるかみよ」 「わがきつる」

 
寸松庵色紙 秋下 『わがきつる』 (茶色) 拡大へ寸松庵色紙 秋下 『ちはやぶる』 (薄茶色) 拡大へ
 左右何れも上下斜め二段に散らし書きされているが、右項の散らし方と左項の散らし方とでは趣が異なる。右項は次項に繋がる様に流れを見ながら散し、左項ではそれを受けて単調にならぬ様墨色と散らしに動きを付けている。

継色紙の様に一紙一首で右項左項を形作っている訳ではないが、一紙二首を充分に鑑賞できる様に散らせてある。
         歌295                 歌294
      (末松子爵蔵)             (梅澤氏蔵)
    唐紙は共に「夏草」
色の違いは保存状態による経年変化の差と思われる。


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継色紙
当初二紙に一首として書かれていたもの(C) 「めづらしき」 紀友則(古今集、巻七・賀歌)

 
継色紙 『めづらしき』 下の句(薄紫色) 拡大へ継色紙 『めづらしき』 上の句(渋黄土色) 拡大へ
 此方の物では一枚目左項から上の句を書出し、次の二項(裏面)を飛ばして二枚目右項に下の句を書いたもの。

同様の散らしの他の歌

しらなみの
あすかがは
「われみても」     
あづさゆみ
「みちのくの」
「いそのかみ」
「あめにより」

の八首
 継色紙 『めづらしき』 下の句(薄紫色) 拡大へ 継色紙 『めづらしき』 上の句(渋黄土色) 拡大へ
     下の句                   上の句
 歌一首の上の句を一枚の料紙半分に書き、下の句を別の料紙の半分に書くため江戸時代には
半紙切、半首切と呼ばれていた。
共に裏面には何も書かれていない。
 継色紙 昭和期写本 『おもはむと』 継色紙 昭和期写本 『しらなみの』
    下の句    上の句      下の句     上の句
 同様の散らしの他の歌
(写真の模本は既に継いである状態)

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継色紙
左項に一首を収めたもの(D) 「ゆきふれば」 紀友則(古今集、巻六・冬歌)

 
継色紙 冬 『ゆきふれば』 (薄藍色) 拡大へ
 此方の物には左項にのみ句を配置。右側は大きく空けられている、一枚の半分だけに書くことから半紙切と呼ばれていた。

同様の散らしの他の歌

「恋三 かつ見つつ」 

の二首






       継色紙 昭和期写本 『恋三 かつみつつ』
            恋三
 部立の恋三のみ右項にあり

継色紙
左右両項にかかって一首を収めたもの 「こひしさに」 作者及び所載不詳

 
継色紙 恋 『こひしさに』 (薄藍色) 拡大へ
 此方の物には右項に上の句、左項に下の句を配置。

同様の散らしの他の歌

「まてといふに」     「山たかみ」
なつのよは」      「むめのかの」
「おほぞらの」      「よのなかは」
「あしひきの」       「あまつかぜ」
「わだつみの」      「神がきの
「きみをおきて」     「つくはねの」
「ふゆごもり」      「はなのいろは」

の十五首

 継色紙 明治末期写本 恋 『こひしさに』 (薄藍色) 拡大へ 継色紙  『神がきの』 (雅 藍色) 拡大へ
   下の句      上の句
 恋しさに見に来てしまいましたよ貴男の狩りする姿を、なのにどうして私を帰そうと為さるのですか貴方をどう怨めば心治まるるのでしょうか。

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継色紙
左右両項だが右項に返して一首を収めたもの(E) 「やまざくら」 紀貫之(古今集、巻十一・恋一)

 
継色紙 恋 『やまざくら』 (薄黄土色) 拡大へ
 此方の物には右項に下の句、左項に上の句を配置。左から書き出し右に返したもの。

同様の散らしの他の歌

「くるるかと」 
「このよひの」 
「かはかみに」 
「みさぶらひ」  

の併せて五首




 継色紙 恋 『やまざくら』 (薄黄土色) 拡大へ 継色紙 明治末期写本 『くるるかと』(上の句)
    上の句     下の句
 山桜が霞の間から幽かに見え隠れするように、はっきりと見分けたり聞き分けたりできない様な人でしたから(手に届かないから)こそ恋しくあるものですよ。

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升色紙
左右の並びは推定、詞書と共に一項に一首を収めたもの(F) 「山櫻見て」「三月つごもりかたより ()

 
升色紙 春 『三月つごもりかたより』 (素色) 拡大へ升色紙 春 『山桜見て』 (素色) 拡大へ
 冊子としての枡形を意識し、詞書と共に一項に歌一首を収めたもの。













 升色紙 春 『三月つごもりかたより』 (素色) 拡大へ 升色紙 春 『山桜見て』 (素色) 拡大へ 升色紙 春 『山桜見て』 (素色) 拡大へ
    5項表      4項表     1項又は2項
 宮内庁書陵部本(桂宮本)によると
「山桜見て」の前に歌は二首
1番「春のはじめ」と2番「はる ゆきのふるひ」で
「はる ゆきのふるひ」には雲母が振られていない。「山桜見て」の裏面だとすると1枚の料紙を剥いだことになる。別紙にあるとすると歌順が違うか若しくは表面(雲母の振られていない料紙の)に書写したことになる。

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升色紙
一項に二首を収めたもの(G) 「ふゆながら そらより・うきみには」

 
升色紙 冬 『ふゆながら そらより』 (素色) 拡大へ
 冊子としての枡形を意識したなかに歌二首を収めたもの。現在残されているのはこの一葉のみ。(元々の料紙からすると半葉)

色紙型を意識して、歌二首を通して墨の濃淡を強調配置している。









 升色紙 秋 『かみなゐの』 (素色) 拡大へ 参考;長い詞書に歌一首を収めたもの
 詞書に歌一首      
 今仮に両面書写したとして深養父集が65首だと仮定すると、64項分の料紙が必要となる。料紙1枚が4項分であるから、1冊には16枚の料紙があったことになる。4枚一折の四折の糸綴じか、2枚一折の八折のもになる。

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升色紙
左右の並びは無関係、隣の行に文字を絡ませて一項に一首を収めたもの(H) 「なつのよは」「いまははや」 ()

 
升色紙 恋 『いまははや』 (薄藍色) 拡大へ升色紙 夏 『なつのよは』 (素色) 拡大へ
 冊子としての枡形を意識し、他では殆ど見られない文字を絡める艶めかしい手法を採って一項に歌一首を収めたもの。
ではあるのだが空間配置は後の世に修正したと思われる後の見られるもの。
当時の美意識の資料としても貴重なもの

同様の成形跡の見られる他の歌

「ひとをおもふ」
「みつしほの」
「こころをぞ」
「うらみても」
「おもひけむ」


 升色紙 恋 『うらみても』 (素色) 拡大へ 升色紙 恋 『みつしほの』 (素色) 拡大へ 升色紙 恋 『ひとをおもふ』 (素色) 拡大へ
   うらみても     みつしほの    ひとをおもふ
 ただ単に破れ・虫食いなどの修正の為の修復だったのかもしれないし、不必要な墨入れ部分を消し去る為、或は空間を空ける為の継紙で鑑賞性を上げる目的で行ったのかもしれない。

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継色紙(参考までに上記升色紙写真と同じ歌)
左右両項にかかって一首を収めたもの(G) 「なつのよは」 清原深養父(古今集、巻三・夏)

継色紙 夏 『なつのよは』 (薄藍色) 拡大へ


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