継色紙 (4寸4分2厘×8寸8分4厘)          戻る 臨書用紙 継色紙へ 
   古今和歌集 粘葉本 染紙(両面加工)断簡;五島美術館蔵

料紙二葉を使い、一葉の左半分(左項)に上の句を納め裏面には墨入れしないで、
もう一葉の右半分(右項)に下の句を納めた様式のもの。同様式の歌が8首存在しております。


薄茶色(うすちゃ)         渋黄土色(しぶおうど)

継色紙 ウス茶・黄土色 『女川良之幾』 拡大  使用字母へ
13.4cmx26.8cm



清書用


色見本


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(現代語訳)








継色紙 薄渋黄土色 『夜末左久良』  次の画面へ
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                                         水色文字は使用字母

「上の句」                   「下の句」
 めづらし きこゑなら なくにほ ととぎ す    ここらのとしの あかずも あるか な
  女川良之 幾己恵那良 奈久爾本 止々幾 寸    己々良乃止之能 安可須裳 悪流閑 那

                                             (紀 友則)

薄茶色。左側はやや白味の薄茶色、右側はやや黄味の茶色で渋黄土色です。写真は中央で継いで有りますが、粘葉本では料紙2紙にまたがって書写してあります。(表面のみ書写、裏面には墨入れ無)
継色紙と呼ばれる所以です。

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(現代語訳)

「珍しき声ならなくに時鳥 ここらの年の飽かずもあるかな」
珍しい鳴き声でも無いのに時鳥よ、ここ最近の年でもその声に飽きる事も無く過ごしているものだなあ。



                                                              
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昭和中期の模写本(粘葉装)A 渋黄土色
継色紙 黄土色拡大 『上の句』 当初の書写位置  解説へ
(現代語訳)
                                           水色文字は使用字母
「上の句」めづらし きこえなら なくにほ ととぎ す
     
女川良之 幾己恵那良 奈久爾本 止々幾 寸

古今集(巻七;賀歌)では、内侍のかみの右大将藤原朝臣の四十賀しける時に四季の絵かけるうしろの屏風にかきたる歌。とありますが、やはり上の句のみ左端に於いてあります。美しさを選択した贅沢な使い方です。
それとも他に別の意図が有ったのでしょうか?、皆さんは如何思われますか。
昭和中期の模写本(粘葉装)B 素色(しろいろ)
継色紙 薄茶色拡大 『下の句』 当初の書写位置  解説へ
(現代語訳)
       水色文字は使用字母

                          「下の句」ここらのとしの あかずも あるか な
                            
己々良乃止之能 安可須裳 悪流閑 那

古今集(巻七;賀歌)下の句 粘葉本の前の項(この料紙の裏面)には書写されておりません。
上の句から続く為、右端に書かれておりますが、やはり左には大きく余白を取られております。上の句を意識して絶妙に散らしてあります。当初から継いで鑑賞することを意識していたのでしょうか!!。

昭和中期の模写本(粘葉装)《半紙切二枚を継ぎ、歌一首としたもの=継色紙》
継色紙 ウス茶・黄土色拡大  このページのトップへ継色紙 ウス茶・黄土色拡大  次の画面へ  解説へ
(現代語訳)
 上記写真A(上の句の料紙)を解体して半紙切(豆色紙)とし、同様にB(下の句の料紙)も半紙切(豆色紙)としてから繋いで一枚の料紙として歌一首を鑑賞するために継色紙と呼ばれています。

珍しき声ならなくに時鳥 ここらの年の飽かずもあるかな
現代語訳
珍しい鳴き声でも無いのに時鳥よ、ここ最近の年でもその声に飽きる事も無く過ごしているものだなあ。
解釈
これまで何度も耳にしてきた時鳥の鳴声は賞賛すべき素晴らしい声で鳴くわけでも無いのに、ここ最近の年であってもやっぱり名残惜しくいつまでも聞いていたいものだなあ。

若い頃には恋心を掻き立てる声としてよく聞かされていたものだが、この歳になってもやはりあの有り触れた声が名残惜しいものだなあ。との意を詠んだ歌。


ならなくに;…ではないのに。…ではないから。断定の助動詞「なり」の未然形「なら」に打消しの助動詞「ず」のク用法「なく」が付き更に助詞「に」の付いたたもので、前の語を軽く否定して後の語を肯定する意を表す。

ここら;ここ最近。または、沢山。たいそう。




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